細胞の秩序#4
そもそも細胞の秩序って出版社の人が見たら「その売れなさそうなタイトルはやめましょう」っていうでしょうね笑 でもいいんです。ここは私が仕事や世間体にとらわれずに好きなことを書く場所だから笑
ということで、今日は赤血球の話。以前、私たちの体は細胞でできているって話をしましたね。細胞には核があり、これは自分の分身やコピーを生成する役割があると。アメーバなどの単細胞生物が自分たち種族を絶やさないために、たった一つの細胞でも自分たちの子孫を増やしていますが、ある意味私たちの細胞もそれと同じことをしているんです。つまり、アメーバにとっては種族の繁栄、人の細胞にとっては自分の体を生かすため(最終的には種族の繁栄につながりますが)に、細胞内に『核』が存在しているんです。細胞=核がある=自分たちを生かす、という意味があります。
でも、実は、赤血球という細胞には核がないんです。今しがた「細胞=核がある」といったばかりなのに、何をいっているんだって感じですが笑 でも、赤血球という細胞には、核がありません。
赤血球は皆さんもご存じの通り、血中に存在する細胞です。ヘモグロビンという名のタンパク質を多く含んでいて、酸素とむずびつきやすい性質をもっています。
赤血球って楕円形で真ん中がへっこんだ、白玉とか焼く前の半バークみたいな形をしているんですが、これは細胞の中心に核がないため。ではなんで赤血球には核がないんでしょうか?ほかの細胞はみんな核を持っていて自分の分身をつくっているのに、なんで赤血球だけないの?!かわいそう!
でもそれは、赤血球が酸素を運ぶという役目を全うするために必要なことだったんです。
私たちの37兆個の細胞は一つ一つすべてに、酸素が必要です。酸素がなければ細胞は機能できずに死んでしまいます。
だから赤血球は自分の遺伝子を残すことをやめて自らの核を捨て、少しでも多く酸素を運べる形態に体を変化させ、細胞に酸素を供給しているんです。生物学的に見たら子孫を残すって本能の一部。ヒトとして見ても、細胞単体で見ても、生物は子孫を絶やさないのが役目の一つであり、生物の価値や意味だったりします。(社会的なはなしではないです)でも赤血球はみんなを生かすためにそれを捨てたんですね。
なんかこういうと、本当に赤血球がかわいそうな感じがしますが、前回もお話した通り、細胞たちに意思はありません。赤血球は単純に、核をなくして形状記憶細胞に徹した方が循環するのに合理的だっただけ。彼らは120日間の寿命を授けられ、20~30万回,約10万kmの距離を体内で循環するんだから。そのほかのことに目を向ける時間はないんです。
ふむ。もう赤血球って、母ちゃんじゃん。「子供たちが独り立ちするまでという期間」を与えられて、その中でできることを精一杯やる。もはやそこに大した意思なんぞない笑 子育てしてたらつらいこととか大変なこととか泣きたいこととかもあるけども、心折れる必要はないし、自分が犠牲になっているなんて感じる必要もない。ただ、それが役割なんだから。限りある時間の中でできることを全うする。赤血球かっこいい。
細胞たちは意思もなく、自分たちが生れ落ちた体を生かすためにやるべきことを全うしているわけです。そこには、私たち本体の意思も関係ありません。“ただ”細胞たちがその働きを全うすることで、”ただ”私たちは生かされているだけ。私たちは、”ただ”の細胞の集合体。じゃぁ、”ただ”生かされている私たちが全うするべきことは?
今日はこのへんで。